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2020年11月アーカイブ

近時、自営業者の方やサラリーマンの方が、ファクタリング業者と取引をして被害に遭うケースが増えているようです。「給与ファクタリング」「被害」というキーワードで検索すると、たくさんの記事がヒットします。金融庁も、ウェブサイト内で、ファクタリングに関する注意喚起という記事を掲載していますので参考にしてみてください(https://www.fsa.go.jp/user/factoring.html)。

 

このように言うと、なんだか「ファクタリング」自体が悪いことのように聞こえるかもしれません。しかし、ファクタリングの全部が違法なわけではありません。適法で正常な取引として行われているファクタリングもあります。

 

問題は、「ファクタリング」と称して、実際には違法な高利率によるヤミ金融取引が行われていて、その被害に遭っている方が増えているということなのです。被害者は、ファクタリングにより当座の資金が得られるので、ヤミ金業者に感謝している場合もあり、被害に遭っていることに気づかない場合もあります。

 

今回は、ファクタリング被害の説明をする前提として、「ファクタリングって何?」というお話をしたいと思います。

 

 

「ファクタリング」という言葉に明確な定義はありません。ファクタリングを直接的に規制する法律も見当たりませんし、ファクタリングという言葉が出てくる法律もありません(インターネットの法令検索サービスであるe-Govで「ファクタリング」を検索しても、法律レベルではヒットしません。)

 

「ファクタリング」を一言でいうと、金融を得ることを主な目的として、債権を保有している者が、一定の割引料や手数料等を負担した上で、債権を売却して譲渡することを内容とする取引だと言えます。

 

例を挙げて説明しましょう。

建設業を自営するAさんは、ある年の1月15日に、元請である建設会社B社からある工事を下請けとして受注し、請負代金1000万円のうち半分の500万円は契約時にすぐに払ってもらい、残りの500万円は工事が終わる予定である3月の末に払ってもらう契約をしました。しかし、Aさんは、今月は経費の支払がかさみ、1月末に入金される500万円だけでは従業員3人の給料が支払えません。

この場合、どうしても1月末までに資金が欲しいAさんは、B社に対する売掛債権のうち、3月末に入金予定の500万円部分を、ファクタリング業者であるC社に売却することにしました。AさんとC社は、契約をし、債権の売買代金を460万円とすることで合意し、C社は、Aさんに、1月31日に460万円を支払いました。Aさんは、その460万円で、従業員に給料を払うことができました。

 

C社は、Aさんから譲渡を受けた債権に基づいて、3月末にB社から500万円を支払ってもらえますので、500万円と売買代金460万円との差額である40万円が儲けということになります。このように、Aさんは、本来であれば支払が2か月先になる500万円の債権をすぐに換金する形で金融を得ることでき、C社は500万円の債権を460万円で買い取って40万円の利益を得ることができるという取引です。

 

このような一種の金融取引を、事業として(商売として)行う業者があり、そのような業者をファクタリング業者と呼びます。ファクタリングとは、要するに、債権の売買を手段とする金融取引だということができます。

 

商取引においては、「毎月〇日締めの翌々月末日払い」などとして、日々発生する売買などの取引を毎月決まった日で締め切って集計し、少し期間があいた後日にまとめて支払いをするという、掛取引が慣習化しています。その締切日から支払期日までの間の期間を「支払サイト」と呼びます。30日後に支払ってもらえる場合を「30日サイト」といい、60日先であれば「60日サイト」といいます。

 

その支払サイトは業界によってまちまちですが、建設業、通信業や製造業などでは支払サイトが比較的長めに設定され、商品やサービスを提供する請負側、業者側、売主側の資金繰りを圧迫する場合があるようです。その資金繰りの関係で、多少割引料を負担するという損をしてでも、保有している売掛債権をファクタリング業者に売却して現金化するというニーズが出てくるわけです。

 

今回はこの程度にして、次回は、ファクタリングの種類など、もう少し掘り下げて説明してみましょう。

 

(中野星知)

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